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2023年~2026年にかけて、所有者不明土地を解消する複数の関連法が施行予定です。
関連法の1つである不動産登記法の改正では、相続登記が義務化され、罰則規定も整備されます。
関連法が施工される背景には、所有者不明土地の増加問題があり、土地取引や復興事業の妨げになっているのです。
今回は、2023年から2026年にかけて施行予定の所有者不明土地に関する法改正について解説します。
所有者不明土地とは、所有者が直ちに判明しない未登記の土地・または判明しても所在が確認できない土地を指します。(※1)
これらの土地は、基本的に許可なく使用・売買できないため放置されています。
個人間での土地取引を困難にする他、近年は緊急時の防災・復興工事の妨げも問題視されているのです。
所有者不明土地の総面積は、既に九州全体以上に相当し、放置すると2040年には北海道の面積にまで拡大すると推計されています。(※2)
※1)参考:「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」(法務省民事局令和4年6月)
https://www.moj.go.jp/content/001375975.pdf
所有者不明土地が発生する主な原因は、相続登記の放置です。
では、なぜ相続登記が放置されるのでしょうか?
主な理由は以下の2つです。
・相続登記は義務ではない
・未登記で現所有者・使用者が不明な土地は、金銭的負担を免れることができた
2022年現在、相続登記は義務ではなく、任意であるため放置しても罰則規定はありません。
また、未登記で所有者不明の土地は、市町村での把握が難しく、固定資産税が徴収されていませんでした。
(令和2年から使用者を所有者と見なして課税する改正法が施行されましたが、相続人調査には大きな事務負担がかかる上、調査を行っても所有者を特定できない土地も存在します。※2)
これらの理由から何世代にも渡り、登記されず放置状態が続くと、法定相続人は、ねずみ算式に増え続けていきます。
相続人が増加すると、付き合いが疎遠になる親族・所在が確認できないケースも増えるでしょう。
このように所有者の特定が困難な所有者不明土地が増加していくのです。
※2)参考:所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/144643_02.html
所有者不明土地の発生を防ぐために、相続登記が義務化されます。
相続登記義務化に伴い、以下のような負担軽減策が導入予定です。
1.相続人申告登記の新設
2.登録免許税の免税措置の延長・拡充
3.相続土地国庫帰属法
1の相続人申告登記の新設により、相続登記の申請書類が簡略化される他、相続人単独での申告も可能になります。
2は相続登記時の登録免許税の免税策です。
全国の土地価格100万円以下が対象で、2025年3月31日までに相続登記をすると、登録免許税が免税されます。
3は土地を相続したものの手放したい方が対象の法律です。
「土地の管理負担がネックになる」など望まない相続をした場合に土地を国庫に帰属できます。
2は既に施行中で、2025年まで延長が決定。1・3は2024年~2026年に施行予定です。
参考:「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」(法務省民事局令和4年6月)
https://www.moj.go.jp/content/001375975.pdf
未登記による主なデメリットは以下の2つです。
・相続登記申請漏れー10万円以下の過料
・住所変更登記の申請漏れー5万円以下の過料
不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
また、住所変更をした場合は、変更日から2年以内に変更登記の申請が義務付けられました。
いずれも正当な理由なき申請漏れは、過料の罰則の対象となるので注意しましょう。
参考:不動産登記法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について
https://www.moj.go.jp/content/001360818.pdf
今回は、所有者不明土地が増加している問題と今後の法改正について詳しく解説しました。
相続登記は、2024年4月1日から義務化となる予定です。
通常の法律であれば、施行日以降に適用されますが、今回紹介した関連法は2024年以前に登記されていない土地にも遡って適用されます。
まずは登記未了の土地がないか確認し、早めに対応しましょう。